2012.9~2014.3の期間の集計結果
こども健康相談会の2012年9月から2014年3月までの、1年半の活動をご報告します。
こども健康相談とは
NPO法人ふくしま30年プロジェクトが運営する「こども健康相談会」は、
放射能の影響を深刻に受け止め子どもたちの健康を心から心配する医師の集団が2011年に立ち上げた「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」と協力して、カウンセリング的な対応を行ってきました。
その相談にあたり、協力医師に、相談者のこれまでの生活や、現在の状況を理解してもらうために、問診、生活の記録を記入してもらっています。その内容を抜粋して報告します。 【図01】
健康被害に対する不安
福島県が行っている甲状腺検診では甲状腺がんの疑いも含めて平成26 年3 月31 日現在 89名の異常者が出ています。身近に手術を受ける子供が出現していることで、子を持つ親は、福島に居てよいのか避難すべきか再び悩み動揺しています。
県が行っている健診結果は、最近まで結果の詳細が知らされませんでした。セカンドオピニオンを求めることも簡単ではありませんでした。
子どもの体調が悪いと、つい、放射能の影響と結びつけて考えてしまいがちとなり、不安を口にすると、「風評被害をあおっている」など、非難される雰囲気があり、「相手の顔色をうかがいながらしか、放射能の話しができない」状態があります。子どもの健康を心配する親たちは、相談できる相手もいないまま、周囲との摩擦を感じる生活が続いています。
これらの悩みは、放射能の影響が不確定であること。 行政の初期対応が不適切だったこと。
そして今も、行政が子どもたちを守る取り組みをしていないと感じていることが根底にあるからです。
不安と葛藤を心の奥底に持ったままの生活が続いています。 【図 02】
相談を受けた方たち
WBC測定の結果からも、Ⅰ期は未就学児、小中学生とその親世代が中心でした。
Ⅱ期以降は、未就学児を測定対象から外したことで、小学生が多く測定されており、その世代の親御さんの健康相談に繋がったり、健康相談を受けるためにWBC測定をしていたことがうかがえます。
小さいお子さんの内部被ばくを心配される方が多かったことがわかります。 【図 03】 【図04】
相談を受けたお子さんの性別の男女比はほぼ同じ割合でした。 【図05】
医師に相談したい内容
相談を受けるにあたって1家族に1つ書いてもらった問診には、医師に相談したい内容として10項目をあげて複数回答としました。
福島市においても甲状腺検査が2012年5月から開始となったため、「甲状腺検査の結果について」の相談が多くみられました。それに続き、「生活の注意点」「現在の健康状態」「初期被曝の影響」についての相談が多くありました。【図 06】
アンケート回答
ここからの集計は、お子さん1人1人で行動が違うため、お子さんごとにお答えいただいていますので、総数が違ってきています。
避難の有無については、相談者の約半数が避難を経験されていました。【図 07】
避難の先については、県内が24%、県外が67%、県内も県外も避難された方は5%でしした。【図08】
震災前後の通院の比較としては、震災前に通院ありと回答した方は20%で、震災後は29%と微増でした。【図09】
現在の気になる症状について
現在の親御さんが気になっている症状について、15項目の中から選択してもらった結果です。
全体の回答数305件で、「症状がない」と答えた方が83人で最も多かったです。次いで多い、その他の内容は「体力がない」「アレルギー」「かゆみ」などがありました。以下、「疲れやすい」「鼻血が出る」「咳が続いている」「口内炎がある」の順となっています。 【図 10】
連動した活動
福島で健康相談会を実施していくのと併行して、各地の避難や支援の団体から依頼を受け、健康相談会にかかわってきました。【図 11】
こども健康相談会の今期は9月までの予定で通常大人は3000円の負担をいただいているWBC測定を、健康相談にあわせてご両親にも受けていただくよう、家族のWBC無料測定を実施しています。
● 1日分の食事にどのくらいのセシウムが含まれているか測定する、陰膳調査(毎月 6家族限定)
● ご家族の健康状態と保養場所や期間、健診・検査の記録保存のための健康ノートの配布
● 安心して食べていただける食材の提供として、無農薬野菜の販売
● 在住・避難・帰還の別なく、放射能問題に取り組む女性の交流の場としての、ふくしまくらす交流会
● 「こどもみらい測定所」のみなさんの協力で、子ども達に放射能を知り、考えるための放射能ワークショップ
健康相談時に配布している「健康ノート」。また、「はかる、知る、くらす。」は、こどもみらい測定所・国際協力NGOセンター(JANIC) ・ ADRA Japanの三団体が共同で製作した冊子です。【図12】 【図13】
以上、これがこれまでの「こども健康相談」の活動報告を簡単にまとめたものです。
活動に携わってきて感じてきていることは、福島に暮らす私たちが立場や考えの違いはあっても、共に放射能と向き合い、手を携えて乗り越えていかなければならないことだと思います。
福島では今後も長きにわたり、放射線防護の意識を持ち続けることが必要となっています。