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フリマサイト等で売買される山形県産コシアブラから 食品基準値超が相次ぐ現状について
ふくしま30年プロジェクトが2021年4月~5月にかけて、フリマサイト(メルカリ、PayPayフリマ、ラクマ)やオークションサイト(ヤフオク!)、ネットショップで購入したコシアブラを75件測定したところ、28パーセントにあたる21件が食品基準値(1キログラムあたり100ベクレル)を超えるという結果になりました【表1】【図1】。
【表1】2021年度 フリマサイト等で購入したコシアブラ
採 取 地 | 測定件数 | 基準値超件数 | 基準値超割合(%) | 中央値(Bq/kg) | 最高値(Bq/kg) |
---|---|---|---|---|---|
青 森 県 | 2 | 0 | 0 | - | - |
岩 手 県 | 4 | 2 | 50 | 86.5 | 186 |
宮 城 県 | 7 | 5 | 71 | 132 | 285 |
秋 田 県 | 4 | 0 | 0 | 36.1 | 63.0 |
山 形 県 | 23 | 6 | 26 | 50 | 229 |
福 島 県 | 2 | 1 | 50 | 242 | 463 |
茨 城 県 | 4 | 2 | 50 | 112 | 224 |
栃 木 県 | 2 | 1 | 50 | 201 | 385 |
群 馬 県 | 1 | 1 | 100 | 271 | 271 |
新 潟 県 | 7 | 0 | 0 | 4.96 | 22.9 |
長 野 県 | 16 | 3 | 19 | 31.8 | 238 |
富 山 県 | 1 | 0 | 0 | - | - |
岐 阜 県 | 1 | 0 | 0 | 2.06 | 2.06 |
鳥 取 県 | 1 | 0 | 0 | 1.89 | 1.89 |
ま と め | 75 | 21 | 28 | 38.5 | 463 |
測定件数が多い山形県と長野県は、そのままフリマサイト等への出品数が多いことを反映しているからです。ただし、山形県については長野県と決定的に違う点があります。長野県では6自治体にコシアブラの出荷制限要請※が出ていますが、山形県では出荷自粛要請が最上町に出ているのみです。それ以外の自治体には、出荷についての規制が一切出ていないのです【図2】。この規制の緩さが、山形県からの出品数の多さにつながっているのではないでしょうか。
前述したように山形県では最上町にコシアブラの出荷自粛要請が出ており、県も毎年の調査を行っています。しかし、県の調査で食品基準値を超える例がないことから、最上町以外に出荷自粛及び出荷制限要請が出ていないというのが実情です。現実にはフリマサイト等で食品基準値超のコシアブラが売買されているが、県の調査で食品基準値超がないために野放し状態となっています。
あえて野放し状態と表現するのは、食品基準値を超えるコシアブラは現実に存在するのに、県が確認しないことには、公的に食品基準値超があることにはならないからです。そして、県や自治体ではコシアブラ等の山菜について、自主的な放射能測定をしてから出荷をしてほしいと告知していますが、出荷制限要請が出ていない状態での告知にどれだけの説得力があるのかは疑問です。福島第一原発事故後、山形県内のコシアブラについての規制は、矛盾を抱えたうえにこのような不可解な状態で現在に至っています。
ふくしま30年プロジェクトがフリマサイト等で、食品基準値超の山形県産コシアブラを発見したのは2020年からでしたが、1年経った2021年においても多数の食品基準値超コシアブラを発見しました【図3】。2020年も福島市保健所を通じて山形県へ情報は行っていますが、調査及び検査体制は変わっていないように見えます。このままでは、ネット上で基準値超のコシアブラの流通を抑制することはできないのではないでしょうか。
そして、流通しないまでも、人々がそれらを可食していることは容易に想像できます。この状態を改善するためにも、行政に通報する以外に社会に対して情報発信し、訴えていく必要があります。引き続き、調査とその結果の共有を行っていきますので、よろしくお願いします。
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フリマサイト等のネット通販で購入した山形県産コシアブラ測定結果(みんなのデータサイト) [外部サイト]
[ 2021年7月1日 福島市保健所より基準値超について調査結果の連絡があったので表を更新しました ]
※出荷制限要請
基準値を超える放射性物質が検出された食品については、状況に応じて、出荷や摂取の制限が行われます。
食品中の放射性物質に関する検査は、原子力災害対策本部が決定したガイドラインに従って、地方自治体が検査計画を策定し、実施されています。このガイドラインでは、過去の検査結果から放射性セシウムの検出レベルの高い食品(野生のきのこ・山菜類、野生鳥獣肉等)等を重点的に検査することを定めています。
検査の結果、基準値を超過した食品があった場合には回収・廃棄が、基準値を超過する食品に地域的な広がりが認められる場合には、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)が地域や品目を指定して出荷制限の指示を行います。
また、著しい高濃度の値が検出された品目については、その品目の検体数にかかわらず、速やかに摂取制限を設定することとされています。
(政府広報オンライン「各都道府県等が検査を行い、必要に応じ出荷制限を行います」
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201204/3.html 及び原子力災害対策本部 「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」平成 27 年3月 20 日に基づき作成)
本資料への収録日:平成 25 年3月 31 日
改訂日:平成 28 年1月 18 日
環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成27年度版)」 第8章 食品中の放射性物質
出荷制限は国と県とのやり取りがあるため、出荷制限の要請が出るまでにタイムラグが発生します。対して出荷自粛の場合は、知事からの要請ということで素早く対応できるという違いがあります。そのため、県として速やかに出荷自粛要請を出し、追って(1~2か月遅れ)国から出荷制限要請が出る場合もあります。
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