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雑記

20177/10

環境創造? コミュタン福島

 2016年2月から3月にかけて、福島県立博物館(会津若松市)で、特集展『震災遺産を考える―ガレキから我歴へ』が開催されました。この展示会はどのような主旨で企画されたのか? 以下、長くなりますが、福島県立博物館の公式サイトでの特集展解説ページより引用します。

ふくしま震災遺産保全プロジェクト アウトリーチ事業 震災遺産を考えるⅡ
会津セッション「震災から5年を迎えて」 について
 ふくしま震災遺産保全プロジェクトでは、東日本大震災を歴史と位置づけること、歴史として共有し、未来に伝えることを目指しています。そのためにはまず「福島県に何が起きたのか?」「福島県に何が生じたのか?」を明らかにすることを出発点に、震災で生じた出来事の背景や要因を探っていく必要があると考えています。震災で福島県に起きたこと、すなわち「ふくしまの経験」を示す歴史的資料として、私たちは震災が産み出したモノやバショに着目し、これを「震災遺産」と呼んでいます。

1 あの日・あの時から ―揺れる大地・迫る海・崩壊した「安全」
2011年3月11日から今日までに発生した出来事を、象徴的な震災遺産から振り返る。

2 「避難」の多様性
一時避難所、「一日だけの避難所」など福島県特有の避難を避難所資料から考える。

3 断絶する「日常」 ―学校・生活・仕事―
震災で断絶する日常・回復しない日常を被災地に残されたままとなった器物から紹介する。

4 思いがけない「未来」
震災によって意味が変わったもの、新たに生み出されたものから福島県の今の姿を考える。

福島県立博物館 特集展「震災遺産を考える―ガレキから我歴へ」より

 

 わたしはこの特集展で展示されていた上記の資料を見ることで、今回の地震や津波といった自然災害と、東京電力福島第1原発が起こした核災害の現場の一端を見た思いがしました。百聞は一見にしかずとは言いますが、まさに本物が発する迫力に圧倒されました。


 その4ヵ月後の2016年7月に、福島県環境創造センター交流棟、愛称はコミュタン福島がオープンしました。この施設は、福島県田村郡三春町に全体の総工費約100億円で建設し、その運営費には年間9億円をかけているそうです※1。この施設を建設した主旨について、公式サイトの概要には以下のような文章が掲載されています。

「コミュタン福島―福島県環境創造センター交流棟は、県民の皆さまの不安や疑問に答え、放射線や環境問題を身近な視点から理解し、環境の回復と創造への意識を深めていただくための施設です」

 わたしは、上記のような環境の回復と創造をしなければならなくなった原因は何なのか? そこを踏まえたうえで、放射線や環境問題を理解してもらうような施設として建設したのだろうと想像していました。 なぜなら、横浜市に避難した子どもがいじめを受けた問題で、横浜市教育委員会は、再発防止のために放射線について学べるコミュタン福島を視察したという報道があったからです※2。それこそ、福島県立博物館での震災遺産展示と同じ考えで構成されたものでないと、原発事故からの避難に対しての偏見が理解できないのではないか。
 しかし、わたしは6月21日に、初めてコミュタン福島を見学しましたが、様々な展示物がありながらも、この施設が震災遺産の主旨とはかけ離れた考えで構成されていることが分かりました。


 コミュタン福島館内に入って最初のスペースが『ふくしまの3.11から』となっています。壁一面の横長のスクリーンには、『ふくしまの歩みシアター』として、2011年3月11日からの経過が10分程度の映像でくり返し流されています。そして、スクリーン向って左横には、『新聞報道で振り返るふくしまの歩み』として、3月11日の朝刊、その日常の風景と比較するように翌日からの地元新聞、福島民報と福島民友の災害報道が展示されています。その中には、放射能の数値やそれに対しての国側の評価など、今の視点で見ると驚く記事が並んでいます※3。新聞が展示されている反対側のスペースには、『2011.3.11 14時46分からのふくしまの歩み』として、福島第1原発内での動き、国・県の対応などを時系列でまとめた表が壁一面にあり、その前には、『事故後の福島第1原子力発電所』として、事故直後の様子を再現した模型が展示してあります。
 これらの展示物を見て感じるのは、まるで、東京電力福島第1原子力発電所が起こした核災害が人災ではない、自然災害のような形で説明されているということです。あの時の東電や、国や県といった行政の不手際には一切触れていない。今まで、マスコミが報じた中でも、前述の点については様々な問題点が指摘されていました。しかし、ここの展示物では、人が関与したことについては一切触れられていないと感じました。震災遺産では、避難中の様子が分かる、それこそ肌感覚で分かる資料が展示されていました。しかし、『ふくしまの3.11から』では、言うなれば神の視点で構成されたものしかなく、これを見ても絵空事にしか感じられないだろうということです。このような考えで作られた「環境創造センター」で復興という言葉が語られても、上っ面のように感じたというのが正直なところです。


 そして、『ふくしまの歩みシアター』の奥には、以下のコーナーがあります。

『ふくしまの環境のいま』空間線量の推移、人口推移、再生可能エネルギー導入などのふくしまの現在の姿を数値によって表現している。

『放射線ラボ』放射線測定器や霧箱などを置いて、五感では分からない放射線を感じてもらおうというコーナー。除染の状況や、県内各地の放射線量の表示もある。

『環境創造ラボ』福島県が再生可能エネルギーなど、循環型で持続可能な社会を目指すことを解説するコーナー。

『環境創造シアター』コミュタン福島の目玉である、360°映像シアター。

 重複しますが、これら上記のことを知り、考えることになったのは、どういったことがあったからなのかという視点がないのでは、プレハブの上に増築をしていくようなものであり、すぐに崩壊してしまうのではないでしょうか。震災遺産のような知識を土台として持ち、その上で今の福島があるということを学ばなければ、放射線の知識を得ても、再生可能エネルギーの可能性を知っても、本人のものにならないと思います。


 震災遺産は、6年前の非常事態時の苦しさや辛さなどを含有した影のようなものです。福島県にとって震災遺産が影の部分とするならば、コミュタン福島は、莫大な建設費をかけた箱ものによる恩恵という意味も含めた光です。しかし、一方の光の面だけを見ても不完全であり、もう一方の影を学んでいかなければ、本当の姿を知ることにはならないと思います。

(あべひろみ)


※1 放射線や環境、福島で学ぼう 環境創造センターが全面オープン 日本経済新聞 2016/7/22

※2 いじめ問題受け横浜市教委が視察|NHK 福島県のニュース

※3 飯館村でヨウ素117万ベクレル/土壌、直ちに退避不要 | 全国ニュース | 四国新聞社
  2011年3月23日の福島民友の1面に同記事が掲載されている。上記のように、四国新聞社でも同内容の記事が全国ニュースとして掲載されているので、共同配信の記事だと思われる。
 『土壌の放射性物質の量には国の基準値がなく、文科省は「直ちに退避が必要なレベルではないが、長期的な影響については専門家の判断が必要だ」としている』との文科省のコメントがあるが、飯舘村はこの一か月後に計画的避難区域に指定され、全村避難となった。

 

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